秘密の花園×名なしの森
独特の匂いが漂うここは、たしかに手芸品屋さん。あたしの行きつけのお店のひとつだ。
萌さんのネイルサロンでのバイトと通院以外、決まって出かけることもないし、することもない。暇つぶしではじめたのが、お裁縫だった。
貰い物のミシンを相棒に、結構な数を仕立てた。たとえば、ワンピースとか、スカートとか。独学だけど、簡単なものなら自分で型紙を起こせるようになった。もともと手先が器用な方だったからだろう。
でも、今日の目的はここではない。
お店をまっすぐ通り抜けると、太い廊下に出る。緑色の道を、小走りで突っ切った。もちろん、湊くんの手を引いたまま。