秘密の花園×名なしの森

 エスカレーターを登りきると、お香の香りが鼻をかすめた。

 いかにも京都! という土産物が集められた売り場は、もうすぐ閉店だからかがらんとしている。店員さんはみんな暇そうだ。ガラスケースに寄りかかったおじさんが、ふああと口を開けた。

(大きなあくび)

 後ろできょろきょろしている湊くんを引っ張って、エレベーターの前まで駆けた。

「おかあさん、大人二枚ね」
「一四○○円です。おおきに」
「ありがとう」

 窓口のおばさんからチケットを受け取ると、後ろでぽけっとした顔をしているだろう湊くんを覗き見た。案の定、彼はそんなような顔をしていた。

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