秘密の花園×名なしの森

 展望用のエレベーターの扉が開いて、真っ先に視界に入るもの。

 京都の、夜景。

 彼は、「すごい」、と嘆声を漏らした。

 あたしは望遠鏡に手を伸ばして、湊くんに目を向ける。

「綺麗でしょ? あたしが育った街」
「とても……綺麗です」
「湊くんに、どうしても見せたかったんだ」

 ふと隣を見上げると、びっくりした表情の彼があたしを見つめていた。

(そういえば、湊くんと手、繋いだままだ……)

 何処か遠いところで、そんなことを思った。

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