あ甘い恋は、ふわっと美味しく召し上がれ
「取り付く島もないな」
国崎君が、横で見てて呟いた。
若干、俺じゃなくてよかったっていう表情を浮かべてる。
「う~ん」どうしたんだっけ。
「あんたら、二人して二次会にこなかったから、どうにかなったのかと思ったけど」
「どうにもなってないみたいね」
国崎君に言われなくても、よくわかる。
付き合ってもいないのに。
なんか深刻な状況なのかな、私達って。
国崎君が心配して聞いてくれた。
「大丈夫か?手伝うよ」
課長に、国崎君の半分でも優しさがあれば。
「いいえ。なんとか自分でやる。こうなったら、検討したの全部持って片っ端から説明する」
国崎君が、止めろと肩をつかんだ。
「だから、少しなら付き合うって。たくさん持っていけばいいってもんじゃない、止めとけって。でも、珍しいよな。初めて見たよ。課長があんな感情的になってるの」
「あれで、感情的なの?」
普通に怒ってるだけじゃないの。
感情的になって熱くなってるっていうより、いたって冷静で、私情なんかまったく挟まな人のように見えるけど。
「感情的に見えるって言うんなら、多分ね。理由は、決まってるわ。焼きもち焼いたのよ」
こうなったら、やけくそだ。
そうやって知らん顔してても、ちゃんと聞いてるでしょ?
「やきもち?お前、何寝ぼけてるんだ?課長が、いったい、誰にやきもちなんか焼くんだよ」
国崎君が、面白がって大きな声を出す。
「決まってるじゃないの」
「ムカつくな。お前。顔がにやけてんじゃないか」
国崎君が私の頬を指で思いっきり引っ張る。
「何すんのよ、痛いってば!」
「うるさい!仕事中だ、止めないか」
課長の不機嫌な声がした。