あ甘い恋は、ふわっと美味しく召し上がれ
「その節はどうもありがとうございました」
私は、社長の横に立って挨拶をした。
「どう?仕事には慣れた?」
社長、ニコニコ顔だ。
「はい」
「そう、良かったね」
「すみません、お忙しいところ。社長におうかがいしたいことがあります」
「立ってないで、そこに座りなさい」
社長は、カウンター席に座っていた。
「はい。ありがとうございます」
隙を見て足元を見ると、微妙な感じだった。
社長は、つま先をちょんと床につけている。
私は、さっき国崎君とやり取りしたことを社長に話した。
社長は、一通り聞いてから、「あっそう」と言って考え込んだ。
「それはそうだね。経営する側も、毎年やっていたものと大幅に変えて欲しいとは思っていない」社長は頷く。
「はあ」
「ただ、何もないことはないよ。我が社は大幅な合併をしてから、3年になる。そろそろ研修も一緒に行いたいし、内容も精査する時期じゃないかと思うけど」
急に視界が開けてきた。
「あ、ありがとうございます。それだ!!」
私は、すでに書類を集めて出口の方に体を向けていた。
「国崎君、聞いてた?落ちてたのはそれだ。私行ってくる」
「行ってくるって何処?」
「課長のところ。ごめん、お金立て替えておいて」