あ甘い恋は、ふわっと美味しく召し上がれ
その日が終わった後も、

その日は、しばらく吉沢さんから聞かされた話が理解できず、時々考え込んでしまった。

どうしても、仕事の能率が上がらす、遅くまで残っている課長に合わせて、私もたまっていた仕事を片づけていた。



ぼんやりしてたら、横に課長がいた。

「どうした?言われたことが気になるのか?」

私は、まっすぐ課長を見て言う。
「気になるに決まってるじゃないですか?」


「今さら後悔しても、仕方ないだろう」
本当に、人ごとみたいだ。
勝手に選んで、勝手に惑わせて、今度は知らん顔しようというのだ。


「そうですけど。コンピューターじゃなきゃ、こんな見当違いの場所に連れてこられなかったのにと思うと……」複雑だ。選ばれなければまだ、元の職場にいたのかなと思う。


課長がいつの間にか、隣に立っている。
そして、心配そうにのぞき込む。


「君は、後悔してるの?まだここで働くのが不本意だと思ってるの?」

「まさか。そんなこと、ほとんど思わなくなりました」


「そうか、それならよかった」
課長が頭の上に、優しくポンと手を置く。
置いたままの手から、ぬくもりが伝わってくる。

「よかったんでしょううか?」
私は、顔を上げた。


彼と目があった。

優しい目だと一瞬思えたけど、すぐに元に戻っってしまった。



「よかったんじゃない?俺は、そう思ってるよ」
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