あ甘い恋は、ふわっと美味しく召し上がれ
フロアは、いくつかの部屋にわかれていて、部屋ごとに扉がある。
けれど、部署名が総務部と書かれてるのが、1つあるだけで、人事と書かれた扉はない。
プレートがかかってるのは、総務部だけだ。どうしようかな。
扉がいくつもあってどこから入っていいのか分からない。
3月までの組織表では、人事課も総務部の中にあって、ひとくくりになってる。
細かい座席表を見ないと、中の様子はわからない。
人事ってどの辺りだろうな。
うろついていたら、さっきビルに入るとき歩いてた、黒髪の毛サラサラのお姉さんが出て来た。
良かった。彼女に聞いてみよう。
さっきと印象が違って見える、豊かな黒い髪をくるっと後ろでまとめている。
「あの……すみません。人事課ってどこですか?」
「人事?ああ、その廊下の一番奥のドアから入るといいよ。まあ、中は全部つながってるけど」
「そうなんですか?」
「なに?早いね。納品の業者さん?」
にこやかに笑いかけてくれる。
「いいえ。違います」
「えっと、じゃあ、レンタルの業者さんか何か?」
それも違います。
じゃあ、誰?
って顔で見られてる。
「えっと、話せば長いんですけど……」
面倒くさそうに、入口を指して言う。
「一応、受付の女の子来たら、会社名と名前書いて置いてね。黙って入るとうるさいから」
「はい」と返事をした。