あ甘い恋は、ふわっと美味しく召し上がれ
「栗山君」

「栗原です」


「あっ、そう。君は、やったことない仕事が不安がなの?」

「はい。私はずっとお店で売り子をしてその後、店の運営を助ける仕事をしてきました。
ですから、慣れた仕事をさせていただければ、成績も上げられますし、上げ方も心得ています」

せめて、営業職にしてください。お願いします。

人事部のオフィスにいて、あのメガネ男にいびられるより、これからの季節、汗だくになって外回りして働いた方がましです。

私に、一日中パソコンとにらめっこしろだなんて、死ねって言ってるのと同じです。

椅子をくりっと動かしながら社長が言う。
床に足、届いてるのかなあ。社長。

「なるほど。私もねえ、社長なんてやりたくなかったんだけどねえ。
誰もやるもんがいなかったから、仕方なく引き受けたんだけどねえ、君、私に辞めていいよって言ってくれる?」

なに言ってるんですか?社長!

「言えません。社長が辞めたら会社が回りませんから」

この会社をここまで大きくしたのは、この小さな社長だ。

それは、社員全員が知っている。この小さな社長が、会社を大きくしたのだ。
< 27 / 240 >

この作品をシェア

pagetop