あ甘い恋は、ふわっと美味しく召し上がれ

社長さん、にこにこっとして嬉しそう。

椅子を小刻みにクリックリッと横に揺するのが、癖なのかなあ。
もちろん、普通気が付かない程度の、微妙な動きだけど。

可愛くて手伝ってあげたくなる。

駒みたいに、背もたれ押して、一周回してあげようかって?

だめだ、相手は自分の会社の社長だ。

私は、邪念を払いのけて言う。


「私を、店舗運営課に戻して欲しいんです
」北関東じゃなくてもいいから。

出社してみて、本社の管理部なんて、楽しいところじゃないと思った。
だから、せめてメガネ君のいないところに。

「もとに戻すってこと?」
社長、驚いた様子で意味が分からないって顔で言う。

「私を、人事じゃないとこにやってください」

どうせ、本社の社員には見えないんだし。
毎日、出入りの業者さんにしか見られないかもしれない。

実際に仕事したら、あのメガネに、なに言われるのか分かりません。

「どうして戻りたいんだい?」


「私は、店舗運営課 運営管理責任者としてお客様がどうしたら、もっと満足してくださるのか。どうすれば、スタッフがもっとモチベーション高く働けるのか、そういうことを考えて働いてきました。ですから、一日机に張り付いてる人事部は、向いていないと思います」

おおお、自己啓発プロジェクト、最強。

覚えたことが、すらすら出てくる。
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