夜の甘やかな野望
「倫子さん、見たことある?」
「海外旅行を・・・したことがないので」
「そう。
好きじゃない人、結構いるよね」
金銭的理由なのだが、倫子は黙っていた。
「神の世界」
言葉と共に立ち上がった白い息が消えていく。
「時々、そこに立ち返らないと。
他人の命を預かる身分だし・・・。
息苦しいんだよね」
唐突に言葉が切れた後、紡がれた一言の白い魂は空に上がって行った。
「“てにをは”は合ってますけど、言っている意味がわかりません」
「ちょっと倫子さんに呟いてみたくって」
「呟くなら、専用のSNSがあるじゃないですか」
「え~、だって倫子さんに受け止めてほしいんだもの。
このぐらいの願いなら聞いてくれてもよくない?」
雰囲気がいつものように砕けたものに戻っていた。