夜の甘やかな野望
「いいじゃないの。
赤い顔にさせられるのって、僕だけじゃない?」
「赤くないから」
ぶっきらぼうに言って、無理やり歩き出す。
宗忠は少し引きずられてから、腕を放した。
「父親がね、病院を経営していたりするんだよね」
は?
倫子は驚いて振り返った。
穏やかだが、距離を感じさせる微笑だ。
「理事長っていう立場。
今の院長は雇っているんだけど、まあ身内を院長にしたいってわけ。
だから医者への道を敷かれて、歩いてきた。
まあシフトなんか優遇はされているけど、それはそれで敵ができるし。
エセ味方ばっかりだし。
まあ、開業医のようなものだから、どう?」
「なんですか、どうって」
「院長夫人になれるよ」
「それ、いりますか?」
「どうかな」
小首をかしげる。