夜の甘やかな野望


    *


淡いベージュのコートを着ていた。


前を留めずに、両手をつっこんで、寒さで少し肩をすくめている。


若手俳優みたい、と倫子は宗忠の姿を見て思った。


風で前髪が乱されたらしいのに、倫子は手を伸ばして、直してあげる。


宗忠はちょっと困ったような顔をした。


「倫子さん、あのね。
前に、院長夫人になれるよって言ったけど。
 あれ、無しになった」

「は?」

「ごめんね。
 勘当されちゃった。
 あのマンション、追い出されちゃったし、病院もクビになっちゃった」


苦笑している。
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