夜の甘やかな野望
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淡いベージュのコートを着ていた。
前を留めずに、両手をつっこんで、寒さで少し肩をすくめている。
若手俳優みたい、と倫子は宗忠の姿を見て思った。
風で前髪が乱されたらしいのに、倫子は手を伸ばして、直してあげる。
宗忠はちょっと困ったような顔をした。
「倫子さん、あのね。
前に、院長夫人になれるよって言ったけど。
あれ、無しになった」
「は?」
「ごめんね。
勘当されちゃった。
あのマンション、追い出されちゃったし、病院もクビになっちゃった」
苦笑している。