夜の甘やかな野望
倫子はそれ以上は言えず、ハンガーにかけたばかりのコートを手渡した。
宗忠は倫子の体にゆるく両腕を回した。
「でも倫子さんと一緒に住むって嬉しい」
笑顔に邪気はなく、倫子も微笑した。
「いってらっしゃい」
「いってきます」
宗忠は倫子を一瞬ぎゅっと強く抱きしめて腕をほどいた。
「あ、別れる気、ないからね」
ちょっと意地悪そうな微笑がドアの向こうに消える。
倫子は口元を緩めた。
だとしても。
夢が覚めるのは、思ったよりも早いのかもしれない。
倫子はしばらくドアを見つめていた。
それまで、二人の時間を思いっきり楽しむだけ。
それだけだ。
倫子はガチャリとドアに鍵をかけた。