エースとprincess
帰りに使う電車の路線が車両故障で運転見合わせ。それでなくても週末の夜の時間帯だ。迂回路を選ぼうにも、駅構内でさえ人で溢れているのだから、電車がぎゅうぎゅう詰めになるのは目に見えていた。
蒸し暑くてしんどそう。ここも人いきれでかなりむっとしているけれど、この比じゃないんだろうな。でも帰らないと。疲れているし。だけど金曜日だしお酒臭い人もいるかもしれない。って、私もだけど。乗りたくないな。
定期を出したまま構内の広告の下に立ち尽くしていると、
「乗りたくねえな、電車」
谷口主任がそばに立っていた。
「ですね」
「かといって歩いて帰れる距離じゃねえし」
谷口主任とは、異動があってから何回か一緒に帰ったことがあった。途中まで帰る方向が同じだった。乗り換えないでいくと谷口主任の最寄り駅につき、乗り換えてふたつめが私の降車駅だった。とはいえ私の家は駅からだいぶ離れている。通勤に使っている駅と谷口主任の駅との中間くらいに位置していた。まさかと思って聞いたら、お互いの家は徒歩で行けないこともない距離だった。
「じゃ、一緒にいきますか」
「いくか。こうしていても埒があかない」
飲み会が捌けてから時間がたっていたし、帰る方向が違う人もいて、みんなばらばらになってしまっていた。
想像に違わない満員電車のなか、谷口主任は一応は身体を張って、私を押し寄せる乗客から守ろうとしてくれた。けれども結局は押しつぶされてしまって、でも守ろうという気持ちだけは伝わってきて、私は声を出して笑ってしまった。
蒸し暑くてしんどそう。ここも人いきれでかなりむっとしているけれど、この比じゃないんだろうな。でも帰らないと。疲れているし。だけど金曜日だしお酒臭い人もいるかもしれない。って、私もだけど。乗りたくないな。
定期を出したまま構内の広告の下に立ち尽くしていると、
「乗りたくねえな、電車」
谷口主任がそばに立っていた。
「ですね」
「かといって歩いて帰れる距離じゃねえし」
谷口主任とは、異動があってから何回か一緒に帰ったことがあった。途中まで帰る方向が同じだった。乗り換えないでいくと谷口主任の最寄り駅につき、乗り換えてふたつめが私の降車駅だった。とはいえ私の家は駅からだいぶ離れている。通勤に使っている駅と谷口主任の駅との中間くらいに位置していた。まさかと思って聞いたら、お互いの家は徒歩で行けないこともない距離だった。
「じゃ、一緒にいきますか」
「いくか。こうしていても埒があかない」
飲み会が捌けてから時間がたっていたし、帰る方向が違う人もいて、みんなばらばらになってしまっていた。
想像に違わない満員電車のなか、谷口主任は一応は身体を張って、私を押し寄せる乗客から守ろうとしてくれた。けれども結局は押しつぶされてしまって、でも守ろうという気持ちだけは伝わってきて、私は声を出して笑ってしまった。