傷痕~想い出に変わるまで~
「俺がメールしても返事くれなかったのに。」

「それは…。」

「俺が家まで送らせてって言っても断るのに、門倉さんには送ってもらって腕枕で添い寝するような仲なんだ。」

「違う…そうじゃなくて…。」

「ホントは俺のこと迷惑だった?浮気して別れた男なんかって。瑞希が会ってくれるようになったから、瑞希は俺を許してくれたんだとか…瑞希も俺のことまだ少しは想ってくれてるのかなって勘違いしちゃったよ…。」

自嘲気味に笑う乾いた声がした。

「昔と同じだ。」

「え?」

「瑞希は毎日残業で帰りが遅くて、休みの日まで仕事に出掛けて…だんだん俺には見向きもしなくなって…ホントは仕事じゃないのかもとか、職場に男がいるのかもって…ずっと不安だった。今だって瑞希が門倉さんといたことを考えるだけでおかしくなりそうだ。」

「…そんな風に思ってたの?」

「どんなに俺が瑞希を好きでも、瑞希にとっては俺なんか仕事とか職場の人たち以下だったもんな。仕事がなくて暇をもて余してる時くらいしか俺とは一緒にいてくれなかった。今もそれは変わってない。」

そんな風に思ったことは一度もなかった。

昔も仕事は大事だったけど、光を仕事以下だと思ったことなんてないし、今だって仕事がなくて暇をもて余してる時だけ会っていたわけじゃない。

約束した日は急いでなんとか仕事を早めに終わらせて光と会う時間を作っていたのに。

だけどそんなのわかってもらおうとは思わないし、きっと光にはわからない。

これ以上光をガッカリさせるのは忍びない。


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