傷痕~想い出に変わるまで~
光の“一緒にいたい”は、“何年経ってもずっと”って意味だけじゃないんだ。

“できるだけ長い時間を共にしたい”って、もっと言ってしまえば“ずっとくっついてたい”ってことなんだろう。

どんなに時間をかけて歩み寄ったところで、私が仕事をしている以上、“一緒にいたい”という光の気持ちに応えることはできない。

光には申し訳ないけどハッキリ返事をした方がお互いのためだと思う。

「ごめん、光…私やっぱり…。」

やっぱり付き合えないと言おうとした時、それを妨げるかのように光が私の言葉を遮った。

「でも俺は…!瑞希が好きなんだよ…。勝手なのはわかってる。でも好きで好きでどうしようもないんだよ…。」

光の声が震えている。

昔みたいに泣いているのかも知れない。

「時々しか会えなくても仕事以下でもいい。俺は瑞希と会いたいし、瑞希に昔みたいに笑って欲しい…。光が好きだって…一緒にいようねって、言って欲しい…。」

「光…。」

電話越しに聞こえる光の声が、完全に涙声になっていた。

光の気持ちに応えらないならハッキリしなくちゃいけないと思うのに、光を強く突き放すこともできない私はずるい。

だいたいこんな話は電話でできるものじゃない。

「光…ちょっと落ち着いて。このことは今度ちゃんと会って冷静に話そう?」

「…瑞希にとっては俺のことなんてその程度のことなんだよな。だから離婚する時だって…。」

「……離婚する時だって、何?」

「…なんでもない。おやすみ。」


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