傷痕~想い出に変わるまで~
「たまに光と話すとずっとシノのことばっかり言ってたよ。また付き合えるようになったって時はめちゃくちゃ嬉しそうだったな。だけどその後話した時は、シノが笑ってくれないってすごく悩んでた。光はホントにシノのことが好きだったんだな。」

小塚は光が亡くなる少し前に病院へお見舞いに行ったそうだ。


“瑞希には知らせないで欲しい。幸せになって欲しいから、もう俺のせいで悲しませたくないんだ”


別れる時に光が“半年でいいから俺だけの瑞希でいてくれる?”と言ったのは、自分の余命がもうあと半年ほどだとわかっていたからなのだろう。

実際の余命は医師からの宣告よりもかなり短かった。

自分が生きている間だけでも、私を他の人には触れさせたくなかったんだな。

だけど光は私が次に進めるように嘘をついて身を引き、病気で余命が短いことも亡くなったことも私には知らせようとしなかった。

「シノには知らせるなって光に言われてたんだけどな。でもやっぱり俺はシノには知っていて欲しかったんだ。時々は会いに行ってやって欲しいから。」

その週の日曜日、岡見と一緒に光の実家を訪れた。

光と離婚して以来会っていなかったから緊張したけれど、光の母親は涙を浮かべながら私を迎え入れてくれた。

仏壇の前に座ると、遺影には少し若い笑顔の光の姿。

見覚えのある写真だ。

「これね、光のお気に入りだったの。瑞希ちゃんと初めて結婚式の衣装合わせした時の写真。」

ああ、そうだ。

ウエディングドレスを試着しただけで感極まって二人して涙ぐんだっけ。

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