傷痕~想い出に変わるまで~
ひどい顔だな。

こんな状態じゃ電車にも乗れない。

少し落ち着いてから電車に乗ろうと、駅の化粧室で涙を拭いて化粧直しをした。

鏡に映る私は情けない顔をしている。

いい歳してみっともない。

そうだ、あの時の泣き顔に似てる。


光と付き合って1年が過ぎた頃、光の部屋で大喧嘩したことを思い出した。

きっかけは些細なことだったと思う。

そう、本当に些細なことだ。

確か他の女の子に気を持たせるようなことをするなとか、あいつに色目を使うなとか。

売り言葉に買い言葉で、つまらない嫉妬が引き起こした喧嘩だった。

些細な喧嘩のはずが他の関係のないことまで引き合いに出して大喧嘩になり、お互い意地になって一歩も引かなくて、ついには別れ話まで飛び出した。

本気で別れたいわけじゃないのに素直に謝ることができず、もう別れようと言い合って泣きながら光の部屋を飛び出した。

本当は好きだから別れたくなんてないのに、どうして素直に謝れなかったんだろうとか、もう嫌われたかなとか、私と別れてあの子と付き合うのかなとか、悲しくて悲しくて涙をボロボロこぼしながら歩いた。

あの頃の私にとって光と別れることは、世界の終わりに匹敵するほどの絶望だったんだと思う。

それくらい光のことが好きで好きでどうしようもなくて、他に何もなくても光がいればそれでいいとさえ思っていた。


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