傷痕~想い出に変わるまで~
もう一度ノックする音がしてドアが開いた。

部屋に入ってきたのは光だった。


“瑞希、ホントにごめんな”


光は申し訳なさそうにそう言って、ベッドのそばにしゃがんで私の頭を撫でた。

枕に突っ伏してその手を振り払うと、光は“ごめん”と何度も謝った。


“朝早くから一生懸命お弁当作ってくれたんだって、お母さんに聞いた。ホントにごめん”


その言葉を聞いて、落ち着きかけていたのにまた涙が溢れた。


“光のバカ。楽しみにしてたのに忘れちゃうなんてひどいよ”


光はベッドの縁に腰掛けて、子供みたいに泣きじゃくる私を抱きしめながらまた何度も“ごめん”と呟いた。

光があまりにも申し訳なさそうに何度も謝るので、テーマパークにはまた別の日に行くことにして、その日は家の近くの大きな池のある公園で一緒にお弁当を食べた。

手を繋いで池の周りを散歩してボートに乗った。

本当はどこかへ行っても行かなくても、光と一緒にいられたらそれだけで良かった。

ただ忘れられたのが悲しかっただけで、いつも光にとって一番特別な存在でいられたら、それだけで良かったんだ。


そういえば喧嘩をしてもいつも先に謝るのは光だった。

謝らなきゃいけないのは私だったとしても、なかなか素直に謝れない私の性格をわかっているからか、光が先に謝ってくれた。


“ホントにごめん。好きだよ、瑞希”


喧嘩をしても最後にはその一言で仲直り。

離婚する時、光は一度も謝らなかった。

もう好きじゃない私とは仲直りする必要がなかったからなのかも知れない。



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