傷痕~想い出に変わるまで~
「言ったろ?いい加減ここらで禊を終わらせないと先には進めないって。おまえも元旦那も、ついでに俺もな。」

「俺も…?門倉は指輪処分して禊はもう済んだんでしょ?」

門倉は大きなため息をついてタバコの火を灰皿の上でもみ消した。

「全然わかってないね、おまえは。」

「…何が?」

門倉は私の禊に関係なく元妻とのことは吹っ切れているみたいだし、私の禊が終わらないと前に進めない理由なんてどこにも見当たらない。

「俺がなんのためにおまえの禊に付き合ってきたと思ってんの?」

「なんのためって…門倉も元妻とのことを吹っ切るためでしょ?」

「俺はとっくにあいつのことなんかキレイさっぱり吹っ切れてるわ。」

吹っ切れてるのに禊に付き合ってきたって何?

門倉の言いたいことがさっぱりわからない。

「同じバツイチの同期を救うためのボランティア的な…?」

「本当のバカだな、篠宮。俺、今軽くショック受けた。」

「え、なんで?」

「篠宮の禊が終わらないと、いつまで経っても俺はおまえにとってただの同期のバツイチの禊仲間なんだろ?」

…は?

「ちょっと意味がわからないんだけど。禊が終わったって同期で同じ課長でついでにバツイチの仲間だって言ったのは門倉でしょ?」

「そうか、確かにそう言ったのは俺だな。ああ、そういえば今日な…。」

それから門倉は突然部下たちのことを話し始め、私が禊を終えた後のことに関しては何も言わなかった。

一体どういうつもりだったのかとモヤッとしたけれど、私はあえてそこには触れなかった。

門倉が何を考えているのか、よくわからないから。




< 63 / 244 >

この作品をシェア

pagetop