傷痕~想い出に変わるまで~
「きっと復縁したいんだよ、あいつは。」

「復縁…?」

思いもよらない門倉の言葉に呆然とした。

門倉はため息混じりにタバコの煙を吐き出して、またライターの蓋を開け閉めしている。

「ずっと一緒にいようって約束やぶったの後悔して、篠宮に会って謝らなきゃって思ったんだもんな。許してもらって仲直りして、復縁したいんじゃないのか?」

今更そんなことしてどうなるって言うんだろう。

お互いに許し合えたら心のわだかまりは取り除けるのかも知れないけれど、だからといって昔のような関係に戻れるわけじゃない。

門倉はオイルライターの蓋を閉めてテーブルの上に置くと、まっすぐに私の目を見た。

「篠宮はどう思ってるんだ?」

「どうって…。」

「もう一度やり直したいとか…。」

いくら光が謝ったとしても、私はこれまでのことをすべて水に流せるだろうか?

何もかもなかったことにしてうまく笑えるだろうか。

どんなに考えてもそれは無理だと思う。

あんな強烈で惨めな記憶は私の中から消えることはないと思うから。

「…それはないよ。あんなことがあったのに、うまくいくとは思えないもん。許したつもりでもやっぱり何かの拍子に思い出して許せないと思う。」

「……だよな。俺もそう思う。だから、もう一度会ってお互いにそれをハッキリさせた方がいい。」

その気がないなら無理に会わなくてもいいような気がするんだけどな。

「なんで?だったらもうこのままでも…。」


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