傷痕~想い出に変わるまで~
深夜の公園で、私は涙を浮かべながら力なくブランコに座っている。

門倉はブランコのそばのベンチに座って黙り込んだままタバコを吸っている。

やっぱり聞かない方が良かったかな。

私は光の妻だったはずなのに、何も知らなさすぎた。

いや、夫だったはずの光から何も知らされていなかったんだ。

信頼されていなかったから本当の意味で夫婦になれなかったのかな。

門倉が地面で火を消したタバコの吸い殻を携帯灰皿にしまって立ち上がった。

「篠宮、ずっとここにいると風邪ひくぞ。そろそろ帰ろう。」

泣き顔を見られるのがカッコ悪くてうつむいたまま少し作り笑いを浮かべた。

「ごめんね、遅くまで付き合わせて。私はもう少し酔いが醒めたらタクシーで帰るから、門倉は先に帰っていいよ。」

「やっぱりバカだな、篠宮。こんな時間にこんな場所でおまえを一人にできるわけないだろ。」

門倉は私の手を引っ張って強引に立ち上がらせ、その長い腕で私を抱きしめた。

「酔ってなんかないくせに。一緒にいてやるから泣きたきゃ好きなだけ泣け。」

門倉の体温が体に伝わってくる。

温かくて優しくて涙がこぼれた。

こんな弱ってる時に平気な顔してこんなことするんだもんな。

思いきり泣いてしまいたいとか思っちゃうじゃないか。

これはちょっとずるい。

門倉の優しさに流されて崩れ落ちないように、甘えたがる弱い心にブレーキをかけた。


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