傷痕~想い出に変わるまで~
タクシーのシートに身を預けてぼんやりと窓の外を流れる景色を眺めた。

岡見と小塚から聞いた話が次々と頭の中に蘇り、胸が痛くて窓の外の景色が涙でにじんだ。

前に別の友人から聞いた話より岡見と小塚から聞いた話は私にとってとてもショックだった。

そして光本人から聞いたあの時の彼女の話もまったく違うものだった。

光は私に本当のことを隠したくて嘘をついたんだ。



結婚して3年が経ち、入社4年目の春。

光はそれまで所属していた商品管理部から営業部に異動になった。

入社当初から営業職を希望していたので、営業部への異動が決まった時はとても喜んでいたし張り切っていたのを覚えている。

まさか営業部でひどい目にあって心を病んでしまうとは思いもしなかっただろう。

「シノ、サークルのOBの栄田(サカエダ)さんって覚えてる?」

岡見は少し言いづらそうにその話を切り出した。

栄田という苗字はそんなに多くもないし、私と光が付き合うきっかけになった人だからよく覚えている。

「ああ、あの飲み会の時に私の隣にいたしつこい人?その栄田さんがどうしたの?」

「偶然なんだけどな。光の就職した会社の営業部に栄田さんがいたんだ。」

「そうなの?!知らなかった…。」

光からはそんな話は聞いたことがなかったのだから、知らなくて当然だと思う。

彼らの話によると、あの時のサークルの飲み会で私と光が抜け出した後、栄田さんはひどく荒れていたそうだ。


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