傷痕~想い出に変わるまで~
「あの時の光は病んでたからな。誰かと触れ合ってないと寂しくて耐えられなかったんだ。性依存って言うのか?」

そんなことも初めて聞いた。

光は寂しさを埋めるために、誰でもいいから抱きしめて欲しかったんだ。

すぐそばにいても触れられない私の代わりに。

結局光は時間をかけて藤乃と別れたそうだ。

すっかり心が病んでしまい精神科に通院していたとも二人は言っていた。

その後、生きる気力をなくした光は病院で処方されていた睡眠薬を大量に飲んで自殺を図ったらしい。

一命をとりとめた光を二人が見舞いに行った時、光は“瑞希に会いたい”と涙ながらに呟いたそうだ。

「こんなこと話しといてなんだけどな。職場でのこととか原因はいろいろあるけど…光はシノのことがホントに好きだったんだ。だから近くにいるのにシノが遠くなってしまったことに耐えられなかった。」

「嫌われたくないから自分の弱さをシノにさらけ出せなかったんだよ。それが光とシノを離婚に追いやった一番の理由だと俺は思う。だからって浮気していいとは思わないけどさ。シノにも原因はあると思うぞ。」

「うん…。ありがとう、話してくれて。」

私は光のことを何も知らなさすぎた。

どれほど寂しい思いをさせていたのか。

どれほど光を傷付けていたのか。

今更だけど、妻として光に寄り添えなかったことを謝りたいと思った。

仕事と主婦業をこなすことで精一杯で、一番大事な妻としてのつとめを疎かにしてしまったのは未熟だった私だ。


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