傷痕~想い出に変わるまで~
メニューを見るとどれも美味しそうで、あれこれ目移りして何を注文しようか悩んでしまう。

明太子のカルボナーラも美味しそうだし、茄子とベーコンとトマトのパスタも捨てがたい。

昔だったらいろいろ注文して一緒に食べたんだけど。

さすがに今は、それもどうかと思ったりする。

「生ハムのサラダ頼もう。瑞希、生ハム好きだよね。あと、マルゲリータかな。」

「う…うん。」

そんなことも覚えてるんだ。

もしかしたら、これまで付き合った私以外の人のことも覚えてたりするのかな。

「そんなのよく覚えてるね。」

「覚えてるよ。瑞希が好きだったものも苦手だったものも、初めて俺のために作ってくれた料理も。」

「…そうなんだ。」

初めて光のために作った料理はオムライスだった。

卵が破れて不格好な見た目だったけど、光は美味しそうに食べてくれたっけ。

そんな時もあったな。

「何にするか決めた?」

「あ…えーっと…どっちにしよう。明太子のカルボナーラか、茄子とベーコンとトマトのパスタか…。」

好きなものをひとつだけ選べと言われたら、私はいつも迷ってしまう。

悩んだ末にこれと決めても土壇場で決定を覆したりもする。

つまり優柔不断なんだ。

仕事ではそんなことないのに。

「迷ってるなら両方頼めばいいよ。一緒に食べよう。」

一瞬うなずきそうになったけど、私は慌てて首を横に振った。

いくら懐かしくても、どれだけ光が優しくても、あまり距離を詰めすぎるのは良くない。


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