傷痕~想い出に変わるまで~
料理を待つ間、特に話すことがあるわけでもなく視線をさまよわせながら水を飲んでいた。

間が持たなくて居心地が悪くて、こんな時に限ってなかなか料理が来ない。

いや、そう感じるだけなのかも。

光も同じように落ち着かないのか、さっきからメニューを見ている。

「ただぼんやりしてるだけってのもなんだから、ワインでも頼もうか。」

「ああ、うん。」

チーズの盛り合わせと白ワインをボトルで注文した。

とりあえずこれで少しは気が紛れる。

光はグラスをひとつ私に差し出し、私がそれを受け取るとワインを注いでくれた。

私も注いであげた方がいいのかなと思ったけど、光は自分でグラスにワインを注いだ。

二人とも何も言わずにワインを飲んだ。

確か初めてワインを飲んだのは光と一緒にイタリアンレストランに行った時だ。

気軽に入れるイタリアンレストランが大学の近くにあって、二人とも飲んだことのなかったワインを初めて飲んでみることになった。

あの頃はまだ二十歳を過ぎて間もなくてお酒に慣れていなかったから、グラスワインを2杯も飲むとほろ酔いになって、二人とも少しフワフワした足取りで手を繋いで帰った。

30歳を越えてすっかりお酒に強くなった今では、もうそれくらいの量では酔わないけれど。

「なんか今…瑞希と一緒に初めてワイン飲んだ時のこと思い出した。」

「…うん、私も。」

自然とそう答えると光は少し嬉しそうに笑った。

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