傷痕~想い出に変わるまで~
「若かったな。」

「お互いにね。」

あれからもう12年も経ったんだ。

嬉しいことも悲しいこともつらいこともあった。

離れてからはそれぞれの道を歩きながら歳を重ねて、また出会うとは思ってもいなかった。

「…いろいろあったね。」

「……うん。」

それからまた二人とも黙りこくってワインを飲んだ。

運ばれてきた料理を食べ始めると光が微かに笑みを浮かべた。

「瑞希と向かい合って食事するなんて何年ぶりかな。」

「この間居酒屋で…。」

「あれは違うよ。ビールとつまみだけだったから。」

「そう…?私の夕飯いつもそんな感じだけど…。」

私の夕飯なんて仕事の後で門倉と居酒屋に行くか、帰って一人で適当なものをつまみにビールを飲むのが当たり前。

結婚していた頃はなんとかして食事の用意をしていたけれど、最近は自分だけのために料理を作るのが面倒だから、あまり自炊はしていない。

光がサラダのトマトを口に運んだ。

ああ、そうか。

いつも門倉の分までトマトを食べていたけど、今日はそんなことしなくていいんだ。

「俺…瑞希の作ってくれる料理好きだったよ。けど一人で食べるより一緒に食べるのが好きだった。料理がどんなに美味しくても一人じゃ味気なかったから。」

「……うん。」

仕事が忙しくなると出勤前になんとか食事の支度だけして出かけ、夜は残業で遅く帰ることが多かった。

帰っても夜中まで家事と持ち帰った仕事に追われて、光とはまともに会話する時間もなかった。

光はいつもそんなことを考えながら一人で食事をしていたのかも知れない。



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