鬼上司は秘密の恋人!?
 

男っ気のなかった姉に恋人がいたのはおどろいたけど、ふたりきりだった私たちに家族が増えるのは純粋に嬉しかった。
たとえ相手の男が子供の認知を拒むような、ろくでなしだったとしても。

子供の父親には頼らずに、ひとりで産んで育てる。
強い口調でそう言った由奈を、命をかけて守ろうと思った。ふたりで子供を大切に育てていこうと思った。

生まれてきた男の子は、宝物みたいに小さくて壊れそうで、見ているだけで涙が溢れるほど愛おしかった。

はじめて目を開いて、私と由奈の顔を交互にみつめた瞬間の感動を今でも覚えてる。
潤んで光る黒くてまんまるな瞳。宝石みたいにきれいだった。

はじめての寝返り、はじめての離乳食。
はいはい、つかまり立ち、はじめての一歩を踏み出した時。
由奈と私は祐一が成長するたびに、手を取り合って喜んだ。

両親を亡くしてからはいつも悲しいときに握っていた由奈の手を、今度は喜びのたびに握りしめた。

幸せだった。
幸せだったのに……。

いつも隣にいて互いに握りしめたその手は、突然私の前から無くなってしまった。

一年前。
二四歳の由奈は、四歳の祐一を残し、突然この世からいなくなってしまった。


両親と同じ、交通事故だった。


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