鬼上司は秘密の恋人!?
家に帰りご飯を食べ、お風呂からあがり髪を乾かしていると、どこかから低い振動音が聞こえてきた。
ブー、ブー、と繰り返すバイブレーション。
自分のスマホかと思い、ドライヤーを止めテーブルの上に視線をやると、そこにあるスマホの画面は暗いままだった。
「ゆきー! なんか音なってるよー?」
首を傾げていると、祐一が私のトートバッグを持ち上げてそう言う。
その中に、なにか入れていたっけ?
心当たりがまったくなくてきょとんとしていると、祐一がバッグの中に手を入れて探り、長方形の黒い何かを取り出した。
「あ、でんわだよ!」
祐一の小さな手の中には、シンプルな黒いケースがついたスマホがあった。
一体誰のスマホだろうと思っていると、祐一が勝手に画面に触れ、通話がはじまってしまう。
『もしもし?』
スマホのスピーカー部分から、微かに聞こえてきたその声に、思わず息をのんで口を覆った。
「トーゴっ!?」
『……その声、チビか?』
「うんっ!」と祐一は顔を輝かしてスマホを耳に当て、その人の名前を呼ぶ。
嬉しそうに何度も。
「トーゴ! トーゴ! トーゴぉ!!」
そのはしゃぎように、今までよっぽど石月さんのことが恋しかったんだと察してしまう。
そしてその気持を私に漏らさないように、必死で我慢してたことも。