鬼上司は秘密の恋人!?
「長尾さん……、どういうことですか?」
強張った声でそう問われ、長尾さんが眉をひそめる。
「一彦さんこそ、どうしてここに」
「私は、蜂谷先生に勉強会だと誘われて、ここに来たんですが……」
そう言った宮越さんの背後から、見覚えのある強面の男の人が顔をのぞかす。
「蜂谷大臣……!」
その人の姿に、長尾さんがはじめて動揺を露わにし、目を見開いた。
テレビで何度も見たことがある、その迫力のある顔。
経済産業大臣を務める大物政治家だ。
少し酔っ払っているんだろう。
気安い仕草で片手を上げる。
しかしそれだけで風格に圧倒されそうになる。
人に注目され、人の上に立つことを当然とする生き方を、もう何十年も続けてきた。
何気ない仕草に、権力者であることをにじませる。
これがオーラというものなのかもしれない。
「臨時会も一段落したことだし、たまには昼間っから酒を飲むのもいいかなと思ってな。私は勝手に飲んでるから、こっちは気にしないでくれ」
蜂谷大臣はそう言うと、ズンズンと部屋に入ってきて、テーブルの前にあぐらをかいた。
それまで誰も手を付けていなかった食事に手を伸ばしながら、石月さんのことを見てにやりと笑う。
石月さんは蜂谷大臣がいることを知っていたんだろう。
全く動揺することなく静かに会釈をして、向かいに座る長尾さんを見やる。
そして、立ち尽くす宮越さんに視線を移した。
「あなたはなにも知らされていなかった。由奈さんとの出会いが長尾さんの仕組んだことだったことも。由奈さんがあなたの子供を産んだことも。……そして、亡くなったことも」
そう言われ、宮越さんは口を覆った。視線を彷徨わせ、私のことを見る。
「由奈は、亡くなったんですね……」
青ざめた顔、震える肩。
彼が本当に由奈の死を悲しんでいるのが伝わってきて、私は唇をかんでうなずいた。