鬼上司は秘密の恋人!?
料亭の玄関を出た宮越さんが、振り返り私のことをじっと見下ろした。
きっと私の姿に、由奈の面影を探しているんだろう。
泣きそうな、でも優しい瞳でみつめられる。
「あの、……私と別れたあとの由奈は、どうしていましたか?」
躊躇いがちにそう聞かれ、私は小さく笑う。
「狭いアパートでわたしとふたりで祐一を育てて、毎日忙しくて大変でしたけど、毎日楽しそうでした。祐一を授かったことを後悔したことなんて、きっと一度もなかった。由奈は幸せでした」
そう言うと、宮越さんは子供みたいにくしゃりと顔を歪ませた。
「よかった……。産まれた子は、祐一くんと、いうんですね」
「はい。五歳になったばかりで、今は保育園にいっていて……」
宮越さんと向かい合いそう口にする途中で、急に後ろから肩を抱かれた。
驚いて見上げると、険しい顔をした石月さんが宮越さんを睨んでいた。
「今更、祐一を引き取りたいなんて言わないでしょうね」
石月さんの言葉にハッとする。
本当の父親が見つかったんだから、彼が祐一を引き取りたいと言い出せば、親権はそちらに移ることもありえるんだ。
焦って宮越さんの事を見ると、穏やかに笑って首を横に振った。
「まさか。祐一くんには会いたいです。自分にできることなら、なんでも協力します。ですが、これまで暮らしてきた有希さんから無理やり取り上げることなんて出来ません」