鬼上司は秘密の恋人!?
 
私はほっとして肩を下ろしたけれど、石月さんはまだ疑わしそうな顔で宮越さんのことを睨んでいた。

「それに、もし私が祐一くんと一緒に暮らしたいと裁判を起こしてごねたとしても、独身で子育て経験もない上に、これから国会議員を辞職して無職になる私に、そう簡単に親権を渡してもらえないでしょう」

その言葉に私が目を見開くと、宮越さんはすっきりした表情で笑っていた。

「そうですか」

石月さんも宮越さんの決意を察して静かに頷く。

「では、失礼します」と頭を下げて、通りに止められた車に向かって宮越さんが歩きだす。
その車の運転席には仏頂面の長尾さんが座っていた。

車の前でもう一度頭を下げ、宮越さんは車に乗り込み去っていく。
その様子をぼんやりと見つめていると、隣に立つ石月さんが不機嫌そうに舌打ちをした。

「おい」
「はい?」

なんだろうと思って石月さんの顔を見上げると、しかめっ面で睨まれた。

「もし祐一をあいつに会わせることになったら、俺も立ち会うからな」
「いいですけど……。なんでですか?」
「姉に似てんのかどうか知らねぇけど、鼻の下のばしてジロジロ顔を見やがって。むかつく……」
「は!?」

あからさまな嫉妬に、驚いて目を見開く。

「いや、宮越さん鼻の下なんて伸ばしてませんでしたよ?」
「てめぇも! なにニコニコ笑いかけてんだよ!」
「なんで笑っちゃだめなんですか!」
「俺以外の男に笑いかけんな、バカ」

横暴すぎる命令に、思わず呆れて肩の力が抜ける。

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