鬼上司は秘密の恋人!?
「小さい! かわいい! 石月さんが飼ってるんですか?」
ビルの影をよく見ると、子猫が雨宿りできるように小さなボックスと、毛布が置いてあった。
あと小さな餌箱も。
「俺じゃねーよ。編集長だ」
「あぁ、野辺編集長は優しいから、捨て猫とか放っておけなさそうですよね」
「あのおっさん、かわいそうだって無責任に餌付けだけして、面倒は人に押し付けんだよ。こんなところに居座って、餓死したり凍死されたら寝覚め悪ぃから……」
石月さんはふてくされたようにそう言う。
猫の小屋用のボックスや毛布は、石月さんが用意したらしい。
怖い人だと思ってたけど、意外と優しいところもあるのかもしれない。
「お前飼うか?」
そう問われ、心が揺れる。
「猫を飼ったら、祐一が喜ぶだろうなぁ……」
ぽつりとつぶやくと、石月さんが「祐一?」と首を傾げた。
「でも、うちはアパートなので無理です。残念ですけど」
「ふーん」
「あ、もうこんな時間! 早く帰らなきゃ、祐一が寂しがる……」
すっかり話し込んで、気づけばとっくに六時を過ぎていた。
これから祐一を迎えに行かなきゃならないから、こんなのんびりしている暇はなかった。
「じゃあお先に失礼します!」
慌てて石月さんに頭を下げ、私は踵を返した。