鬼上司は秘密の恋人!?
「石月さんは和食党なんですね」
出て来る料理名が、意外と素朴なものばかりだ。
「和食党っていうか、家庭料理に飢えてるんだよ、あの人は」
私のつぶやきに、徳永さんが笑う。
「家庭料理ですか」
「石月さん、愛のこもった手料理に縁がないから」
そんなことを話す私達を、石月さんが顔を上げて睨む。
「徳永、勝手な事を言ってんじゃねぇ」
顔を歪めてこちらを睨む石月さんに、私は恐怖で飛び上がった。
しかし徳永さんは慣れっこのようで、平然と言い返す。
「実際縁がないじゃないですか。毎月そんなふうに唸るなら、手料理を作ってくれるような恋人を作ったらどうですか?」
恋人、いないんだ。
あんなにかっこいい石月さんに恋人がいないなんて少し意外。
でも、性格にかなり難ありだから、仕方ないか。
「俺は飯を食いてぇだけで、女なんていらねぇんだよ」
舌打ちをしながら、ふてくされたように髪をかきあげる石月さん。
そんな様子を見た徳永さんは小さく肩を上げる。
「また女なんていらないなんて、強がっちゃって。周りの人間のためにも恋人を作って身を固めてくださいよ」
「強がってねぇよ。めんどくせーだろ、女なんて。どいつもこいつも、恋人を作れとか結婚しねぇのかとか、くだらねぇ。家族なんてひとりで生きていけない奴らが、利己的な事情に愛だの恋だの都合のいい名前をつけて、妥協してるだけだろ」
冷たい声で吐き捨てた言葉に、私は驚いて顔を上げた。