鬼上司は秘密の恋人!?
あれじゃあ、もし部屋が燃えなかったとしても、家財道具は水浸しで使えないだろう。
それに、あのアパートに住むのもきっと無理だ。
頼る人もなく、住む場所もなく、身一つで、小さな子供とふたりきり。
一体どうすればいいんだろう。
両親も姉も突然なくした。
それでも祐一とふたり必死に生きてきた。
それなのに、今度は家が火事になるなんて……。
目の前が真っ暗になる。突然地面がぐにゃりと歪んだ気がした。
血の気が引いて、身体がぐらりと前に傾く。
「ゆき!?」
祐一の叫ぶ声を遠くに聞きながらぼんやりと目を閉じると、誰かに強く抱きしめられた。
「白井! 大丈夫か!?」
耳元で誰かが威圧的な口調で私の名前を呼ぶ。
聞き覚えのある声にうっすらと目を開けると、取り乱した様子の石月さんが私の顔をのぞきこんでいた。
「石月さん……? どうしてここに?」
パチパチと瞬きをすると、石月さんはホッとしたように肩を下ろす。
「取材先から帰る最中に、火事の現場に出くわしたから、一応様子を見ようと思ったんだ。事件があると駆けつけちまうのは、前に週刊誌の記者やってたころの職病業だ」
偶然駆けつけたところに、混乱で倒れた私をみつけて石月さんが抱きとめてくれたらしい。
その横で祐一が泣きそうな顔で私のことを見ていた。