鬼上司は秘密の恋人!?
たどり着いたのは、竹製の塀に囲まれた趣のある平屋の一軒家。
表札には『石月』と書いてある。
ここが石月さんの自宅?
そう思いながら、恐る恐る石月さんの後ろについていく。
玄関に入る前にちらりと見えた庭は、木や草が生い茂り、手入れのされていない小さなジャングルになっていた。
ガラリと引き戸を開け、家の中に入る。
玄関のコンクリート製のたたきには、靴箱を使うのが面倒なのか、革靴やスニーカーがずらりと並んでいた。
「お、おじゃまします……」
周りを見回しながらそう言った私の横で、祐一が元気に「おじゃましまーす!」と声を張り上げる。
「わ、祐一、ひとのおうちでそんなに大きな声を出したらだめだよ」
慌ててそう言うと、石月さんがさっさと靴を脱ぎ廊下を進みながらこちらを振り返る。
「別に気を遣わなくていい。ここは俺がひとりで住んでるから」
「そうなんですか……?」
こんな大きな一軒家にひとりで。
和風の作りの一軒家は、彼ひとりで使うには広すぎる気がした。
廊下を進みリビングに入る。
リビングはフローリングだけど、掃き出し窓の外には縁側があり、どこか和風の雰囲気だ。