鬼上司は秘密の恋人!?
そしてソファにもテーブル上にも、物が雑然と積み上げられていた。
脱ぎ捨てられた服。
飲みかけのペットボトル。
雑誌に書籍、新聞の山。
プライベートの空間というより、まるで編集部の空気をそのまま自宅に持ってきたみたいだ。
びくびくしながら周りを見回していると、石月さんが隣で大きくため息をついた。
「俺は一度編集部に戻るけど、家の中のもの好きに使っていいから。あのチビ風呂にでも入れてやれ」
「え、でも……」
そんな悪いです、といいかけた私の言葉を石月さんが遮る。
「おいチビ! この家部屋はたくさんあるから、勝手に見て回って家の中を探検していいぞ」
「ほんと!?」
はじめての家に興味津々の様子だった祐一は、石月さんの『探検』という言葉に目を輝かす。
「か、勝手に見て回るなんて」
「大丈夫。見られて困るものなんてねぇから。一軒家だから、どれだけ走り回っても誰からも文句言われねぇぞ」
その一言でさらにテンションが上った祐一は、さっそくリビングに面したふすまを開けて、広い畳敷きの和室に歓声を上げる。