鬼上司は秘密の恋人!?
「こんなにひろかったら、でんぐりがえしのれんしゅうができる……っ!」
感動のあまり、ぷるぷると震えながら祐一はそう言った。
「ああ、でんぐり返しでも縄跳びでも、好きにしろ」
はしゃぐ祐一に、石月さんは鼻で笑って頷く。
「あ、ありがとうございます、石月さん……」
慌てて石月さんに頭を下げると、石月さんは私の耳元に口を寄せ、声を落とした。
「家が火事になって不安なのはわかるけど、なるべくいつも通り笑っててやれ」
「え……?」
「あのチビ、お前が倒れたとき、本当に真っ青な顔して震えてたぞ。お前が不安がると、チビにも伝わる。泣いたって怒ったって現状は変わんねぇ。だったらチビの前だけでも、虚勢張って強がってやれ」
低い声でそう言われ、ぎゅっと手のひらを握った。
「布団はそこの和室の押し入れに入ってるから、好きに使っていい」
「ありがとうございます……」
そう言って深く頭を下げると、ぽんと頭を叩かれた。