鬼上司は秘密の恋人!?
見慣れない畳の部屋にはしゃいで走り回った祐一は、すっかり疲れ切ったようで、夕食を食べ軽くシャワーを浴びた後、すとんと眠ってしまった。
リビング脇の和室に布団を敷いて、すやすやと寝息をたてていた。
私はリビングのダイニングテーブルに座り、ぼんやりと時計を見上げる。
もうすぐ日付けが変わりそうだっていうのに、石月さんはまだ帰ってくる気配がない。
石月さんは、いつもこんな時間まで忙しく働いているのかな。
そう思いながら部屋を見回す。
平屋の大きな一戸建て。
宴会でもできそうな大きな和室に、石月さんが書斎代わりにしているらしいパソコンや本だらけの部屋。
ひっそりとした仏間に、使われない荷物が詰め込まれ、しばらく人の踏み込んだ気配のない部屋。
『たんけんだ!』とはしゃぐ祐一について、家の中を見て回ったけれど、寒々しさに驚いた。
石月さんが普段使っているのはリビングと書斎くらいで、その他の部屋はめったに扉を開くこともなく、放置されているんだろう。
狭いアパートにいるよりも、空間を持て余した大きな家にひとりでいるほうが、ずっと寂しく感じてしまう。
長い廊下や、高い天井や、開かれた気配のない戸棚の上に、孤独が染み込んでいるような気がした。