鬼上司は秘密の恋人!?
勝手に触って悪いかなと思いつつ、リビングはざっと整理した。
脱ぎ捨てられたままだった服は脱衣所のランドリーボックスに入れ、ペットボトルや缶は洗って捨てた。
雑誌や本は開いた本棚に移動させ、新聞は新しいもの意外はまとめてしまった。
ゴミが溢れかけたゴミ箱の中には、コンビニや出来合いの惣菜の容器ばかりだし、鍋や炊飯器はしばらく使った気配がなく、うっすらとホコリが積もっていた。
毎日夜遅くまで仕事をして、生活感のない一人きりの部屋に帰り、寝て起きてまた仕事をして。
石月さんが手料理を恋しがる気持ちもわかる。
こんな部屋でこんな暮らしをしていたら、心が休まる気がしない。
その時玄関の方からかたりと音がして、石月さんがリビングに入ってきた。
明かりの付いた部屋を見回し、少し驚いた顔をする。
「あ、ごめんなさい。勝手に悪いかなと思ったんですが、軽く片付けさせてもらいました。本は並びを崩さないように移動しただけなので……」
「いや、いい。ありがとう。家に明かりがついているに、慣れてねぇから」
私の言葉に石月さんは首を横に振る。
「起きてたんだな。もう遅いから寝ているかと思った」
「ちゃんとお礼を言いたかったので。本当にありがとうございます。祐一もすごく安心したみたいで、はしゃいで走り回ってすぐに寝ました」
「だからお前のそういうの、ほんと鬱陶しい」
相変わらず口の悪い石月さんに顔をしかめる。すると私の表情を見た石月さんは面白がるように小さく肩を揺らした。