鬼上司は秘密の恋人!?
祐一は、アパートに向かう道の途中で無事にみつけた。
思わず安堵して抱きしめる。
小さな身体をぎゅっと抱きしめながら「怒ってごめんね」と泣きそうな声で謝る私を、祐一はきょとんとした顔で見上げていた。
どうやらお友達とのやりとりが原因で、どうしてもアパートの様子を見たかったらしい。
「ショータくんが、おばけは、すんでたところにでるっていうんだ」
祐一は、鼻息を荒くしながらそう言った。
「だから、ぼくのママは、アパートでひとりっきりでいるんだって」
祐一の言葉に、私は涙をこらえながらうなずく。
幼稚園のお友達も、決して悪気があって言った言葉ではなかったんだろう。
だけど、母をなくした祐一にとって、自分のママが焼け落ちたアパートでひとりでいるなんて、悲しすぎる話だ。
「ほんとうにママがアパートにいたらかわいそうだから、たしかめようとおもって」
その話を聞いていた石月さんが、祐一の前にしゃがみこんだ。
「そうか。じゃあなんで、白井になにも言わないで勝手に出てった?」
「ゆきは泣き虫だから、きっとアパートにママがいてもいなくても泣いちゃうから。ゆきがごはんつくってるあいだに、こっそりいってかえってくるつもりだった」
その祐一の言葉に、思わず口元を押さえた。
祐一は私を嫌いだからではなく、頼りないからではなく、私を悲しませたくないから、ケンカの理由を言わなかったんだ。
小さな彼の優しさに、鼻の奥がつんと熱くなる。