鬼上司は秘密の恋人!?
胸を張って堂々とそう言う祐一に、石月さんは小さく笑って、ぽんと頭をなでてやる。
「そうか。それでひとりできたのか。すげぇなチビ。そんな小さい足で、こんな長い距離をひとりで歩いて」
石月さんの言葉に、祐一はさらに胸を張る。
「でもなぁ」
言葉を区切ってため息をつく。
きょとんとした祐一に向かって、石月さんは声を低くした。
「こいつ、お前のことを心配して泣いてたぞ。こいつにとって一番かなしいのは、お前がいなくなることだ。泣かせたくなかったら、勝手にそばを離れたりすんな」
そう言われ、祐一は私の顔を見上げた。
泣きはらし赤くなった私の目を見て、はっとする。
「ゆき、泣いたの?」
「すげー泣いて震えてたぞ。お前、男なら好きな女泣かせんじゃねぇよ」
「ごめんね、ゆき」
小さな手で私にしがみつき、背中をぎゅっと掴む。
腕の中の小さな身体を力いっぱい抱きしめた。
ようやくほっとして、頬が緩んだ。
よかった、祐一が無事で。本当によかった。
「じゃあ、一応アパートの様子見ていくか」
そう言って石月さんが立ち上がる。