鬼上司は秘密の恋人!?
『月刊ステートメント』
政治経済、企業データやキャリアアップに役立つ情報、今話題のヒット商品の紹介など、三、四十代のビジネスマンをターゲットにしたビジネス情報誌。
創刊してから今年で四年目。
歴史あるオピニオン誌が名を連ねる総合情報誌の中では、まだまだ知名度の低い雑誌だけど、他誌とは違う切り口の情報分析や、無名だけど面白いコラムを書く執筆者を探し出し育てる形の連載が好評で、少しずつ部数が伸びているらしい。
……というのは、全て説明してくれた徳永さんの受け売り。
参考にどうぞと一冊くれた最新号をぱらりとめくってみる。
目次にぎっしりならんだ難しそうな単語を見ただけで、読書意欲が一気に削がれてページをめくる手が重くなった。
今までまったく興味のなかったジャンルの雑誌の編集部で、今日から私は働くことになる。
やっていけるかな、と不安になりながら目次をじっと見つめる。
するとその様子を見ていた徳永さんにクスクスと笑われた。
「白井さんにしてもらうのは簡単な雑用だから、そんな深刻な顔しなくても大丈夫だよ。お茶出しとか、資料の整理とか、書類の発送準備とか。今はほとんどのライターとPDFとかメールでやりとりしてるから、ゲラを届けに直接行くことも少ないと思うし」
ライター、PDF、ゲラ……。普段あまり聞き慣れない言葉を連発され、軽くパニックになる。
「えっと、がんばります!」
ごくりと息を飲みうなずくと、徳永さんが肩を揺らした。