鬼上司は秘密の恋人!?
 




「大変! もうこんな時間!」

仕事を終えた私は、全力で道を走っていた。
慣れない仕事を真剣にしているうちにあっという間に時間が過ぎ、気がつけば定時を過ぎていた。

なんにでもすぐに夢中になって、まわりが見えなくなるのは私の悪いクセだ。明日からは気をつけなきゃ。
そんな反省をしながら、大急ぎで目的の場所へと向かう。

見えてきた小さな私立の幼稚園。昼間はこどもたちのにぎやかな声で溢れているその場所も、もう夜の七時近い今は、しんと静まり返っていた。
微かに開いた鉄の門扉をすり抜け、明かりの灯った玄関に向かう。こどもたち向けの可愛い動物のキャラクターが書かれた扉を開くと、事務室にいる園長先生と目があった。

「あ、白井さん。お疲れ様です」
「すいません、お迎えが遅くなっちゃって」

息を切らしながら頭を下げた私に、園長先生は優しく笑って首を横に振ってくれた。

「まだ七時前だから、そんなに慌てなくても大丈夫ですよ。今祐一くん呼びますね」
「お願いします」

事務室に置かれた受話器を上げ、保育室にいる先生に連絡する園長先生。
ほーっと息を吐きながらその様子を見ていると、すぐに奥からにぎやかな足音が聞こえ、祐一が私を目掛けて走ってきた。


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