未来郵便 〜15年越しのラブレター〜
「綾音ちゃん、ごめんなさい」

「渡先輩……」

「本当にごめんなさい……」


渡先輩は静かに涙を流した。

この涙に嘘はない。
そう思えた。




「大輝とは別れたんだ」


別れ際、渡先輩が喧嘩の理由と結末を教えてくれた。


「始めは志望校のことだった。私、大輝と同じ所を受験しようって付き合う前から決めてたんだけど、突然大輝が志望校変えてね。噂を聞いた後だったから不安で嫌な言い方しちゃったの。そしたらどんどん話が逸れて、結局辛くて別れようって言ったのは私」

「え?渡先輩からですか?」

「綾音ちゃんが言ってた通り、卑怯な手を使って手に入れても幸せになんてなれなかった。後悔に押し潰されて、あんなに好きだった大輝のことも信じられなくなって。大輝はちゃんと私の気持ちに向き合ってくれたのに……」


ああそうか。

“大輝はちゃんと向き合ってくれた”

これが全て。真実なんだと思う。


私に嫉妬してほしいとか嘘。

葉山はそんな最低なことする人じゃない。


渡先輩のことちゃんと好きだったんじゃないかな。


「私が言える立場にないけど、大輝とちゃんと話してみて」


そう言って、渡先輩はすっかり暗くなった夜道を一人で帰って行った。


その背中を少しだけすっきりした気持ちで見れてる自分がいる。


今日、渡先輩と話せて良かった。


真相がわからないまま、渡先輩を嫌いなまま、うやむやに終わらなくて良かった。


そして私は、一晩考えてけじめの手紙を送ることに決めた。





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