次期社長と甘キュン!?お試し結婚
 お墓を綺麗にするためバケツと柄杓を借りに行こうかと思ったが、どうやらその必要はなさそうだ。叔母さんか、それとも関係者の人が来てくれたのか、お墓は綺麗にされていて花も添えられていた。

 その横に私が持ってきた花束を並べる。カーネーションにバラ、ピンクと白を基調とした花々は、直人の言うとおり、お墓参りには不向きかもしれない。それでも大女優三日月今日子にはぴったりだと思う。

 私は静かに手を合わせた。おばあちゃんに報告するのが随分と遅くなってしまったが、こうして直人とここに来られてよかった。ゆっくりと目を開けると、隣で直人が同じように目を閉じて手を合わせている。

 あまりにも真剣な顔に、つい見つめていると、目を開けた直人が気まずそうな顔でこちらを見た。ごめん、と謝りながらも、顔はどうしても笑ってしまう。

「あまりにも直人が真剣だったから」

「真剣にもなるだろ。晶子のこと、ちゃんと幸せにするって誓ってたんだから」

「……そういうのは、まずは本人に誓って欲しいんだけど?」

 直人は真顔のまま、虚を衝かれたような表情を見せた。私は素早く彼の腕に自分の腕を絡めて、改めてお墓に向き合う。
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