次期社長と甘キュン!?お試し結婚
「営業部から朝一で回ってきた契約はどうなってる?」

「L/Cの発行依頼はもう出しています」

「船積書類のチェックお願いします」

 いつも通り職場はバタバタと慌しかった。私は一人前と言えるほど、なんでもこなせるわけでもないが、後輩のいる立場でもある。一言で言えば事務で片付けられてしまうが、ルーティンワークと呼ぶには首を傾げてしまうくらいイレギュラーな仕事だって多い。

 なんたって海外の企業を相手にすることがメインなので、その国によって時差や通貨、習慣から細かな手続きの違いなど一筋縄ではいかないことを挙げたらきりがない。それがこの仕事の大変さでもあり、面白いところでもあるんだけれど。

 この後は営業部との会議が入っているので移動しなくては。中断した映画を最後まで観たかったな、と名残惜しく思い出しながら急ぎのコンポレ業務を終わらせ、ファイルをまとめて、同僚の女子たちと早めの移動をする。

「会議、就業時間を超えるかな。今日、約束があるのに」

「え、彼氏できたの?」

 楽しそうに喋りながら廊下を歩いていた同僚たちの足が止まり、あとに続いていた私も自然と立ち止まった。お喋りをやめた彼女たちが、なにやらこそこそと色めき立っている。

 何事かと思って前方に視線を移すと、そこには栗林さんを連れた彼がこちらに向かって歩いてきていた。きちっと整えられた髪形に、高そうなスーツを着こなしてまるで隙がない。

 彼がこちらに気づいたのかは謎だが、徐々に近くなる距離になんだか鼓動が速くなる。
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