イケメン富豪と華麗なる恋人契約
(だったらどうして、パパが入院したときに助けてくれなかったんだろう? そうじゃなくても、お見舞いくらい、きてくれてもよかったんじゃないの?)


実父が望月グループの社長の息子というのには驚きだが、それはつまり、命にかかわる重病だったのに、祖父は息子を助けようとはしなかった、ということになる。
あるいは、直人自身が助けを求めなかったのか。

母に近い親戚がいないことはたしかなので、ひょっとしたら、結婚を反対されて駆け落ち……ということも充分に考えられた。


(もしそうなら……お祖父さんだけが薄情、ってわけじゃないのよね)


少しは恨みごとを言いたい気もするが、一度会ってみて、話を聞いてからでも遅くはない。

日向子は気持ちを切りかえたが、それは徒労に終わった。


「ひょっとして、ご存じないのですか?」


朝井が気の毒そうに、彼女の顔を見ながら言う。


「なんのことですか?」


日向子の問いに答えたのは千尋だった。


「あなたにはお祖父さんがいらっしゃいました。――二週間前まで」


彼は実にストレートな言い方をした。その声色には、日向子に対するなんの気遣いも感じられない。それには朝井もまずいと思ったのだろう。


「おいおい、沖くん、ちょっと言い方が……相手は若いお嬢さんなんだ。もう少し、こう、オブラートに包むように伝えるべきではないかな?」


日向子を気遣うように、朝井は千尋に注意する。

だが、千尋のほうは頬を少し歪めて、日向子を見て笑ったのだ。


「それは失礼しました。すでに亡くなられているほうが、こちらのお嬢さんにとっては、喜ぶべき事態かと思いましたもので」


< 15 / 28 >

この作品をシェア

pagetop