イケメン富豪と華麗なる恋人契約
奇妙な符合に気づき、日向子は恐る恐る尋ねてみる。
「直人氏は、望月商事をはじめとする望月グループの社長、望月賢太郎(けんたろう)氏のひとり息子。あなたは望月社長にとって、ただひとりの後継者です」
千尋の返事に、日向子は息が止まった。
約二十五年前――母は日向子の実父である直人と結婚した。
ふたりの間には子供も生まれ、幸福な日々を送っていたが……。日向子が五歳のとき、直人は病気で帰らぬ人となる。そのため日向子の中に直人との思い出は少ししかない。
母が三輪の父の出会い、再婚したのはそれから四年後のこと。
父は積極的に求婚したというが、母は再婚をためらっていたようだ。入籍したのは、大介がお腹に宿ったあとだったと聞いている。
日向子にとって、大介と晴斗は異父弟になる。
当然、ふたりに望月の血は流れておらず――。
「……くん、日向子くん、大丈夫かい?」
小野寺の声が聞こえ、日向子は顔を上げた。大きく息を吐き、そして、ゆっくりと吸い込む。
「ちょっと、待って……待って、ください。それじゃ、わたしにはお祖父さんがいるんですね?」
それは意外なことだった。
直人が入院したとき、母は日向子の世話と夫の看病、そして仕事を抱えて奔走していた。
『ママとパパには、助けてくれる人がいないの。だから、パパが元気になるまで、ママが頑張るからね』
そんなふうに言いながら、少し寂しそうに笑っていた顔を思い出す。
だが、幼いながらも気づいていた。日向子の眠った夜中に、母はこっそり起き出して、声を殺して泣いていたことに。
誰も助けてくれる人はいなかったはずなのに……。
「直人氏は、望月商事をはじめとする望月グループの社長、望月賢太郎(けんたろう)氏のひとり息子。あなたは望月社長にとって、ただひとりの後継者です」
千尋の返事に、日向子は息が止まった。
約二十五年前――母は日向子の実父である直人と結婚した。
ふたりの間には子供も生まれ、幸福な日々を送っていたが……。日向子が五歳のとき、直人は病気で帰らぬ人となる。そのため日向子の中に直人との思い出は少ししかない。
母が三輪の父の出会い、再婚したのはそれから四年後のこと。
父は積極的に求婚したというが、母は再婚をためらっていたようだ。入籍したのは、大介がお腹に宿ったあとだったと聞いている。
日向子にとって、大介と晴斗は異父弟になる。
当然、ふたりに望月の血は流れておらず――。
「……くん、日向子くん、大丈夫かい?」
小野寺の声が聞こえ、日向子は顔を上げた。大きく息を吐き、そして、ゆっくりと吸い込む。
「ちょっと、待って……待って、ください。それじゃ、わたしにはお祖父さんがいるんですね?」
それは意外なことだった。
直人が入院したとき、母は日向子の世話と夫の看病、そして仕事を抱えて奔走していた。
『ママとパパには、助けてくれる人がいないの。だから、パパが元気になるまで、ママが頑張るからね』
そんなふうに言いながら、少し寂しそうに笑っていた顔を思い出す。
だが、幼いながらも気づいていた。日向子の眠った夜中に、母はこっそり起き出して、声を殺して泣いていたことに。
誰も助けてくれる人はいなかったはずなのに……。