イケメン富豪と華麗なる恋人契約
(今度もきっと、大介はわたしや晴斗のために我慢しているのよ。それがわかっているのに、なんにもできないなんて)
弟ふたりに我慢してもらわなくては、この生活を続けることもできない。
日向子は自分に姉としての不甲斐なさを感じ、どん底まで気持ちが落ち込んでしまう。
「大介のほうか。そういや、中三だったなぁ。一番難しい年頃だ。ちょうど、男親が必要になる年齢なんだよ。それで? なにをやらかしたんだ?」
「五月の連休明けに学校で進路調査があったそうなんです。すると、あの子……卒業したら就職するって答えたって聞いて」
最初の進路調査は二年の終わりにあったという。そのときも“就職希望”と書いて出し、担任の先生から『春休みに保護者の方とよく相談して』と言われたらしい。
「でも、わたしにはなんにも言わなくて。三年になっても希望が変わらないから、担任の先生が心配して、わたしに連絡を取ろうとしたんですけど……」
なんと大介は、保護者あての手紙を握り潰していた。
日向子の家には固定電話はなく、日向子が携帯電話を持っているだけ。大介は、その携帯電話を勝手に操作して、学校の番号を着信拒否にしていたのだ。
どうりで、学校からなんの連絡もないはずだ。
そのことを日向子が話すと、小野寺は大笑いした。
「やるなぁ、大介。将来有望だぞ」
「もう、所長ったら、そこは褒めるとこじゃないですよ。担任の先生が不審に思って、ご自宅の電話からかけてくださったんですから」
しかも、学校で話を聞くと、大介には私立の陸上強豪校からスポーツ推薦がきているという。本人さえやる気になれば、都立高校のスポーツ推薦枠を狙うこともできると言われ、日向子はビックリした。
「うちの経済状態なら、授業料は無料だと思うし……大介も普通に進学するつもりだと思っていたから、なんだかショックです。あの子が望むなら、大学だっていかせてやりたいって思ってるのに……」
「そうだなぁ。まあ、いい大学を出て一流企業に入るだけが人生じゃないけどね。ただ、普通に高校生活を楽しんでほしいよな」
「そうなんです!」
陸上をやりたくないならそれでもいい。勉強ができないなら、偏差値の低い高校でもいいのだ。日向子が楽しんだ高校生活を、ふたりにも経験してほしい。
弟ふたりに我慢してもらわなくては、この生活を続けることもできない。
日向子は自分に姉としての不甲斐なさを感じ、どん底まで気持ちが落ち込んでしまう。
「大介のほうか。そういや、中三だったなぁ。一番難しい年頃だ。ちょうど、男親が必要になる年齢なんだよ。それで? なにをやらかしたんだ?」
「五月の連休明けに学校で進路調査があったそうなんです。すると、あの子……卒業したら就職するって答えたって聞いて」
最初の進路調査は二年の終わりにあったという。そのときも“就職希望”と書いて出し、担任の先生から『春休みに保護者の方とよく相談して』と言われたらしい。
「でも、わたしにはなんにも言わなくて。三年になっても希望が変わらないから、担任の先生が心配して、わたしに連絡を取ろうとしたんですけど……」
なんと大介は、保護者あての手紙を握り潰していた。
日向子の家には固定電話はなく、日向子が携帯電話を持っているだけ。大介は、その携帯電話を勝手に操作して、学校の番号を着信拒否にしていたのだ。
どうりで、学校からなんの連絡もないはずだ。
そのことを日向子が話すと、小野寺は大笑いした。
「やるなぁ、大介。将来有望だぞ」
「もう、所長ったら、そこは褒めるとこじゃないですよ。担任の先生が不審に思って、ご自宅の電話からかけてくださったんですから」
しかも、学校で話を聞くと、大介には私立の陸上強豪校からスポーツ推薦がきているという。本人さえやる気になれば、都立高校のスポーツ推薦枠を狙うこともできると言われ、日向子はビックリした。
「うちの経済状態なら、授業料は無料だと思うし……大介も普通に進学するつもりだと思っていたから、なんだかショックです。あの子が望むなら、大学だっていかせてやりたいって思ってるのに……」
「そうだなぁ。まあ、いい大学を出て一流企業に入るだけが人生じゃないけどね。ただ、普通に高校生活を楽しんでほしいよな」
「そうなんです!」
陸上をやりたくないならそれでもいい。勉強ができないなら、偏差値の低い高校でもいいのだ。日向子が楽しんだ高校生活を、ふたりにも経験してほしい。